2012年4月28日土曜日

Embassy Of Japan In The United States Of America


「アメリカにおける日本の寸法」

 

2010年5月14日

 

 

今年は、咸臨丸来航150周年にあたります。
明治初年、訪米したわが祖先達はワシントンの壮麗さに圧倒されました。「雄館傑閣の人観を聳やかすものは甚だ多し――みな白石をもって築成し、巍巍として数千尺に地に起こり、広大壮麗なり」(1872年久米邦武編特命全権大使「米欧回覧実記」)
つぎは、これより少し前ですが19世紀半ば、英国から新興国アメリカを訪問したディッケンズの1842年出版の「アメリカ紀行」の抜粋です。「ロンドンの最悪の地区や、雑多に家が存在するパリのあの郊外を考えてみたらいい。――――石と大理石で出来た素敵な建物を三つ建て、一つを郵便局、もう一つを特許局、さらにもうひとつを財務省と呼び、――――煉瓦のないままの煉瓦工場を置けば、まさにそれがワシントンである。」

同じワシントンでも二つの文章の印象はずいぶん違いますね。ものごとはすべて相対的で、どこから誰が見るかで変わってくるということです。

アメリカに初めて来たとき、米国の新聞を読むと在京の米国人特派員がたまたま目にした我々も知らない日本の一地方の風習が、いかにも伝統的な重要ものとして紹介されていることなどに驚かれた記憶をお持ちの方は多いと思います。日本で思っていたのと異なり、日米関係だけが世界の中心ではないと分かって天動説から地動説に目からウロコが落ちたという人もいるでしょう。
最近はそこに新たな要素が加わります。日本経済が低迷している間に中国の伸長がめざましい、アメリカの有識者はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に大きな関心を持っている、もう日本の時代は過ぎたのではないかという議論です。
他方、もちろん逆の意見の方もいます。日本との同盟関係こそがアメリカにとって最も大事な二国関係だというマンスフィルード説です。日本の技術がなければ米国の防衛も宇宙探査もできないという「ジャパン・アズ・ナンバーワン」哲学の方もいます。

ほんとうのところアメリカにおける日本の地歩、アメリカにとっての日本の意味は、いまどのあたりなのでしょうか。

 

外交、安全保障

 

米国にとって日本は外交的、安全保障上どのような意味があるのでしょうか。日本と米国をつなぐ基本は、新味はないかもしれませんが価値観を共有していることです。民主主義、言論の自由、人権の尊重などの価値観を共有する安心感があると思います。これらは、ふだんは当たり前のこととして見過ごされがちですが、グーグル問題、チベット問題などが起きたり,比較的安定していると思った国で暴動が起きたりするとアメリカ人に再認識されると思います。ひとことで言えば、日本は文化、歴史などの背景は大変違う国だが信頼できるパートナーと認識されているといえるでしょう。
この安心感は世論調査に反映されています。最近もアメリカ人の80%が日本を信頼できる友人と考え(2009年3月ギャロップ社世論調査)、日本人の78.9%がアメリカに親しみを感じる(2009年10月内閣府世論調査)と答えています。
最近の調査では、アメリカ人の好きな国ではカナダ、英国、ドイツの次は日本となっていますが、文化、歴史などの違いを考えるとこれはやはり相当なことでしょう。戦後、長い間をかけて多くの方々の努力でここまで来たのであり、けっして揺るがせにしてはならないと思うわけです。

具体的外交政策を見てみましょう。オバマ大統領はいわば全方位外交を展開しています。したがって日米は核不拡散、経済、気候変動、中東そのほか幅広いグローバルな課題で協力しています。その中でもオバマ政権にとり目下の重要な外交課題は、アフガニスタンからの円滑な撤退とイランの核兵器開発防止でしょう。
アフガニスタン、パキスタン、イラクの三国のいずれの再建についても日本は米国に次いで世界第ニ位の資金的貢献を行っています。これは、国造りなくして平和なしという考えからきています。日本はアフガニスタンでは兵力こそ出していませんが道路などのインフラ整備、治安、農業開発、教育などで大きな貢献をしているわけです。先般ワシントンでのカルザイ大統領歓迎レセプションでもクリントン国務長官は真っ先に日本からの対アフガニスタン支援50億ドルに言及していました。因みにオバマ政権は各国は協力できるところでしてくれればいいという考えで、軍事的貢献にはこだわっていません。


ああ!

イランの核は大きな問題です。イランはもちろん原子力の平和利用の権利はあるのですが、問題は過去18年以上に亘り秘密裏の核活動を行い、それが明らかになってからも、国際社会の求めに応じず、ウランを濃縮し続けていることです。これによりイランによる核爆弾の開発の可能性がでてきてしまうわけです。核不拡散という観点からも中東の安定という観点からもイランの核武装を認めることはできません。米国が放置すればイスラエルが堪忍袋の緒を切るだろうという声もあります。日本としても核不拡散、核軍縮は重要な目標です。ですから日本はイランとは正常な外交関係を有してはいますが、核問題については、イラン側に早急な決着を求めています。この点は私も同席したオタワでの日米外相会談で岡田大臣からクリン� �ン国務長官に明確に伝えました。また、同会談では、双方で、国際社会が結束して対応することの重要性につき一致を見ました。このままでいけばいずれ、国連安保理で協議が行われる可能性が高いでしょう。

因みに今、国連安保理では常任理事国の5大国の間でまず決議案などを詰め、それから非常任理事国と協議する慣わしになっています。国際機関においては、ジョージ・オーウエルのアニマル・ファーム流に言えば皆平等ですが、ある国は残りの国よりさらに平等だと言えるのではないかという声もあります。国連でも世界貿易機関(WTO)でも多くの国がメンバーになっていますが、実は主要な数カ国の意向が物事の行方を大きく左右するのが現実です。
日本が安保理常任理事国になる、WTOで少数主要国の会議に入ることが大事だというのは、自らの意見、考えをできるだけ反映させたい、それがひいては国際社会への貢献になるとの考えからです。国際社会での立ち位置というのは与えられるものではなく自ら築き上げ、保持するものです。
その意味でもG7財務相会議やG8外相会議、G8サミットは日本にとって貴重な機会です。私はかつて総理の補佐役のシェルパとしてG8サミットに参画しました。出席者はEU委員長を含め9人の首脳だけで同席者も各一人のシェルパだけです。そこでの議論は、けっしてスピーチの読み上げでなく、首脳間の濃密で率直なやり取りでした。核不拡散、テロ、経済協力などの広範な問題を比較的考え方の近い国同士で協議できる機会は貴重です。二日間に亘りすべての記録づくり、会議の補佐を一人でやるのは楽ではありませんでしたが、いい場に立ち会えたという充実感はありました。今般のギリシャ危機でもすぐ電話会談が行われたのはG7財務相会議でした。G7,G8よりG20を重視しようという考え方は、問題によっては� ��かりますが,個人的にはやや性急な感がします。

アジア太平洋における日本と米国の関係を見てみましょう。今年2月発表された国防省の四年毎のレビューQDRは次のように書いています。
「米国は過去一世紀以上にわたり太平洋のパワーであり続けている。太平洋の広大さ、この地域における基地インフラの少なさに鑑み前方展開戦力は稀少な価値がある。―――我々は前方展開を強化適応させ同盟国の安全保障に対する米国のコミットメントを再保証する」
米国はインド洋、太平洋には第三艦隊、第七艦隊を擁する太平洋艦隊を配置していますが、地上に配備している兵力は、ハワイに約4万人、韓国に約3万人、グアムに約3千人いるほかは在日米軍基地のみです。韓国にいる米軍の殆どは北朝鮮に対峙するための陸軍です。アメリカがアジア太平洋で影響力を保持するためには、空軍、海兵隊中心の在日米軍の重要性は大きいと思います。アフガニスタン、イラクで米国が戦っていることを考えると特にそうでしょう。
他方、日本の周囲の環境は、冷戦後そう安定しているわけではありません。北朝鮮が安保理決議に違反して核実験を行い、わが国を越えた長距離ミサイルを発射したのはつい昨年のことです。六者会合の再開及び北朝鮮による非核化に向け、日米及び日米韓の間で緊密に連携していくことが重要ですが,その際,わが国としても約3.5万人の在日米軍の存在は心強いでしょう。安保はけっして米国だけのためのものではなく、日本だけのためのものでもなく、日米双方のためのものです。


メリーランド州のショック外傷ヘリコプターの費用

中国の軍事力は伸長しています。過去20年間日本の防衛費の伸びは年平均 0.9%ですが中国の軍事予算の伸びは15.7%でした。年平均日本の10倍以上の伸びです。その結果、軍事予算は今や発表数字だけ見てもわが国の1.5倍です。発表数字だけ見てもというのはご承知のとおり中国の軍事費は建造中の空母や長距離ミサイルを含まないもので透明性が十分でないと言われます。わが国としては、中国の軍事力の増強に注視していくとともに、中国に対し透明性を求めています。中国艦艇の海洋での動きも活発化しています。
アジアの多くの国が地域の平和と安定のために米軍のプレゼンスを心強く思っています。米軍プレゼンスは地域の公共財とも言われます。ただし、米人学者の説の如く「米軍プレゼンスは酸素のように必要不可欠」とまで言われると「それはちょっと違う」と言いたくなります。酸素の特徴は無色無臭です。基地はそうはいきません。ですから基地の周辺住民への影響軽減が必要なわけです。
普天間基地問題につき日米の有識者の中には,この問題は一基地の移転に関するものであり、日米間の第一義的な問題と認識すべきでないという議論があります。しかし基地の問題は安保の根幹の問題です。さらにオバマ大統領、クリントン国務長官、ゲイツ国防長官が関心を持っている問題が主要な問題でない筈がありません。この問題に真剣に取り組むのは当然であり、また不可欠です。

 

経済、技術

 

日本経済は、早晩GDP世界第二位から第三位になります。ではアメリカにとって日本は経済的にどんな意味があるのでしょうか。まず米国政府の統計によれば、日本は米国財務省証券を2月現在約7、700億ドル保有しています。これは約8、800億ドルの中国についで世界第二位です。中国と並んでアメリカ経済へ資金を供給しているといえましょう。この二カ国で海外が保有する財務省証券全体の43%を保有しているわけです。なお、財務状況について言えば、日本は政府債務がGDP比約190%で先進国中最悪の水準にあります。しかし、アメリカとの違いは、国債の約9割が国内で保有されていることであり、我が国次世代への大きなツケにはなっていますが、海外からの借り入れへの依存度は低いことです。米国の場合、 財務省証券の約半分が海外の保有です。
また日本と中国との違いは、現在の日本は大きな対米貿易黒字をつくり、そこから単に証券投資の形でドルを還流しているわけではないという点です。日本の対米貿易黒字幅は800億ドルで中国の三分の一以下です。これは米国の貿易赤字全体の1割で二昔前アメリカの貿易赤字の7割を占めていたことを考えると隔世の感があります。これは日本の企業の努力により米国への直接投資が進み、日本が英国についで第二位の対米投資国になったことが大きいと思います。日本の直接投資残高は2600億ドル(注:08年)であり,66.5万人の米国人の雇用(注:07年)を生み出しています。ちなみに,雇用の半分以上は,自動車関連(含:ディーラー)です(注:39.3万人,08年)。ですから日本は米国に対しモノを売り込むだけでなく雇用を作り出すパ ートナーなのです。また今の不況下でもワーク・シェアリングなどにより地元雇用への影響をミニマイズしようと努力を重ねて来られた日系企業が多いことは特筆されるべきでしょう。私どもとしては、日本のプレゼンスと中国のプレゼンスの違い、日系企業の努力などの点をアメリカ社会にもっとアピールしていく必要があると思っています。

なお人民元が実質的にドルペッグし低く抑えられてきていることも中国の対米輸出増の背景にあると米議会では不満があります。ちなみに,日本円については、リーマン・ショック前と比較して対ドルで約15%上昇しています(2008年8月から2010年4月の間の変化)。

日米間のモノの貿易の8割以上は、鉱工業製品で占められています。しかし日米間では農産物貿易も大事です。日本が輸入している農産物の三割は米国からで、米国は輸入先のトップの座を占めます。産品によっては米国のシエアはもっと大きく、大豆は72%、小麦は61%、豚肉は41%で、トウモロコシにいたっては輸入の99%はアメリカからです。アメリカから見るとNAFTA(北米自由貿易地域)のメンバーであるカナダ、メキシコを除けば日本が最大のお得意様で、トウモロコシ、小麦、豚肉などいずれもトップの輸出先です。農業問題というと牛肉輸入とBSEなどばかりに焦点があたり、これ自体は重要な問題でありますが、全体から見れば大事なパートナーだということを認識しておくべきです。


ピーター·ゼンガーは革命的な戦争で何をした

日本の強みはご承知の通り、依然、技術の高さにあります。1982年から2008年までの27年間、工作機械の生産では世界第1位です。中国やASEANなどの製品の多くは日本の工作機械でつくられているわけです。
日本が特にすぐれた分野があります。たとえば主要な先端産業をみれば通信機器、コンピューターなどの液晶(LCD)用主要部材の6割、産業のコメといわれる半導体製造用部材の7割、航空機の新材料にもなっている炭素繊維カーボンファイバーの8割は日本が占めています。海水淡水化の最新膜技術でも日本企業のシェアは世界の7割です。原子のレベルまで見える電子顕微鏡でも日本は世界の5割を超えるシェアを誇ります。原子力発電についても主要機器部材の鍛造品の世界の8割のシェアは日本です。このように日本は、製品の核となる多くの部材で、世界に貢献しています。ただし二つの課題はきちんと把握する必要があります。ひとつは,資源小国のわが国は原料に乏しく、たとえばハイブリッド車のモーターに不可欠な� ��ア・アースの中国への依存など原料は輸入に依存せざるを得ないことです。もうひとつは,今後は最終製品レベルでの競争力を向上させ、さらには、製品単体に留まらずシステムを組んで、プロジェクトとして世界に提案していく力の養成が強く望まれることです。

以上から明らかなようにアメリカにとっても日本は経済的にもなくてはならぬパートナーです。これからの対米協力の分野は、色々考えられます。
省エネ、代替エネルギーは希望が持てます。日本経済は過去20年以上に亘りエネルギー効率世界ナンバーワンですから色々米国と協力できるものがあると思います。例えば、ニューメキシコ州でも日米でスマートグリッドの実証試験を行っていますし、またハワイ・沖縄間でクリーン・エネルギーの共同プロジェクトを行うことが首脳レベルでも合意されています。
オバマ政権になって新しく始められたのは原子力発電所の新規建設と高速鉄道網の建設です。原子力発電保有数についてはアメリカが104基、フランス59基、日本 54基、ロシア27基 でわが国は世界第3位です。しかしスリーマイル事故以降アメリカは新規建設をストップしてきましたのでこの30年間の新規建設数を見ると 日本29基、フランス21基、韓国15基とわが国がトップでアメリカはゼロです。アメリカはオバマ政権になり原発の新規建設費に政府保証をつけることになりました。知見を有する日本として協力できる有望な分野でしょう。
高速鉄道網の建設もオバマ政権になり始められることになりました。80億ドルの予算が13のプロジェクトに配分されました。フランス、ドイツ、中国なども米国との協力に関心を持っています。しかし、日本は1964年以来最長の歴史を持ち、その間一回の乗客の死傷事故もないこと、年間3億人と最大の利用者があること、車輌が軽くエコフレンドリーであること、地震対策にすぐれていること、年間の平均の遅れが1分以内であること、など多くの強みがあります。最近も前原大臣が主要企業のトップとワシントンに来られラフッド運輸長官ほかに具体的に働きかけていきました。その後すぐ同長官も訪日しました。今般、国際協力銀行の業務についての政令が改正され先進国の原子炉のみならず高速鉄道についても低利融資が� ��能になったのは画期的です。ぜひこれも利用して協力が進められることを期待します。

 

文化

 

「質問といえば決まっている。いつこの国へおいでになりました。アメリカはお好きですか。ホームシックにおなりじゃありませんか。日本のお茶は大変よう御座いますね。日本のキモノは綺麗ですね。私は日本の事だといえば、もうクレージーですよ。」
これは最近の作品ではありません。永井荷風の「あめりか物語」の一節です。明治末期、1908年の出版ですから、百年たっていますが,今私たちが聞くのとあまり変わっていませんね。
もっとも今ですと「うちの車は三台とも日本車ですよ。一昨年夏休みに姪の子が日本に2週間行って美しさに感激したそうです。たしか福島県のヤマモトさんという人の家にホームステイしたそうで、それ以来子供のお誕生日にはいつもスシ・ショップに行きます。マンガに熱中しているのはちょっと困りものですが。ところでひょっとしてヤマモトさんはお知り合いではありませんか。」と言う感じでしょうか。
日本の街では普通の道路に名前がついていないのでびっくりした、とか街並みに統一がなく広告だらけで驚いた、なんてけっして言いません。教育ある米国人は、相手の国についてできるだけ良い事を言うものだという躾を受けているようです。


この年になりますと文化とか伝統というものは、外国との関係においても本当に重要だなとつくづく思うようになります。一つの路線をつき詰めていくと人間の頭脳は自ずと壁に行きあたるようです。新しい発想が必要になります。フランス画壇が浮世絵にとびついたようなものですね。建築でもファッションでも欧米が行きづまってきますと外国のデザインの取り入れに関心が向く。日本人で建築でも服のデザインでも国際的に活躍されている方の多くは、日本の伝統、日本人の美意識をにじませ,それが評価されています。日本映画、日本料理、マンガ・アニメなどこの十年で目覚しい活躍で米国はじめ世界に受け入れられてきました。ある統計によればアメリカ人の好きな料理は1位イタリア料理,2位アメリカ料理で,3位はフラン� ��料理を抜いて日本料理となったそうです。 
これらの日本文化の進出の結果、私達は肩身の狭い思いをせず鼻高々になれます。自国の文化に自信を持てることは重要です。ちなみに日本人ほどよその人が自分たちをどう見ているかといういわゆる「日本人論」が好きな国民はいないと言います。でも米国人もそう嫌いではないようです。
「アメリカ人はたいてい海外旅行すると、あわれな位好かれたいと望んできた。しかも我々はそんなに他人に好かれたがる人間はたいてい嫌われるか軽蔑されることに気づいていなかった。私はアメリカの島国根性の時代は終わったと信ずる。いまや「イギリス人やフランス人やロシア人が好いてくれなくってもかまうものか」というのが共通の感情ではないかと思う。――――アメリカ人の態度がこのように目に見えて変化してきたため、海外で前よりはるかに好かれるようになったのは不思議ではない。」
これは1966年のスタインベックの「アメリカとアメリカ人」の一節です。私はなかなか示唆に富んでいると思います。自らの文化に自信を持てば自ずと他もついてくるということです。
我が家の話をしますと、長女がアメリカで高校生だった十数年前、学校のバレーボールの選手になりました。お弁当に家内のつくったお握りを持っていき、友達にすすめたら、おいしいという評判になり、しばらくするとチームの皆の分を持って行くようになりました。試合後、アメリカ人の女の子達が我先に海苔で巻いたお握りにかぶりつくと言うのです。実は今から50年ほど前、私は一年余りアメリカで中学に通ったことがあります。性格の差もあるかもしれませんが、当時はお握りを学校に持っていくとか友達にすすめるなんて思いもよらないことでした。私の場合、アメリカの中学では、まるで日本で生まれたときからハンバーガーを食べたり、コーラを飲んでいたような顔をしていたような気がします。娘を見て隔世の感がした� �のです。

日本文化の源である日本語教育の普及について心配する声があります。組織的にもっと力をいれるべきでしょう。同時に人間はビジネスチャンスがあるかある国の文化に関心を持てばその語学を勉強するのではないでしょうか。
まず日本、日本文化に関心を持ってもらうことが必要です。その意味で今始めたり始めたいと思っている例をご紹介します。

一つはJET(The Japan Exchange and Teaching Program)経験者の一層の活用です。JETプログラムで日本に行き英語の先生をして帰ってきた若い人に自分の住む地域の小中学校に行って日本での体験談を話してもらうのです。そこで子供たちに日本に興味をもってもらえたらという発想です。いわば「JET大使」といえるかもしれません。これはもう少しずつ始めています。

もう一つは日本人の英語でのコミュニュケーション能力を高めることにより日本人全体としての国際的な発信能力を高め、世界の流れに遅れないようにすることです。たとえば日本の中学校の若い英語の先生全員が1年から2年間米国留学できたら素晴らしいと思います。いかに英語教育を充実すると言っても先生が自由に話せなければ無理ですから。一人の先生が一クラス生徒30人のクラスを毎年、五つ教えるとして30年間には数千人を教えることになります。これほど投資効果の高いものはないでしょう。これはいわば「逆JET」といえるかもしれません。

 

総花的に色々なデータを申し上げましたが、私は、日頃、これらを選択的に米国の議員や国民に説明することに力を注いでいます。もっとこんな点を言ったらいいんじゃないかというご意見があればご教示ください。また皆様全員がこれらのデータもご活用になり日本についていろいろ発信して頂ければ幸いです。大使館も総領事館もよろこんでお手伝いさせて頂きます。


私は日本の国際社会での立ち位置というのはけっして他律的なものではない、自ら造っていくものだということをあらためて強調したいと思います。佐藤春夫の詩に「国のさかりに人となり 国おとろえて老となる」という段があります。そのようなことにならないようにしたいと思います。我々が老いるのは当たり前ですが、国はおとろえさせてはなりません。今が日本の運命にとって大事なときです。我々今アメリカにいる者同士、力を合わせてこの難しい時期にあたろうではありませんか。

   
(了)



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